- 大越
- 農家の後継ぎが実家に戻って農業をする。そのことが日本の農業を元気にすると考えて、NPO法人 農家のこせがれネットワークを設立して取り組むことは大きな意義があると思います。実際にはどのような活動を行なっているのですか?
- 宮地
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活動拠点は東京です。目的は「都会で働いている農家が実家の人たち」の帰農支援。わかりやすく言うと、「東京で働いている農家のこせがれをそそのかして会社を辞めさせ、実家に帰って農業をはじめてもらうこと」が最大のミッションです(笑)。
そのためには「農業の魅力と可能性」を伝える場が必要です。皆さんに来てもらった六本木農園もその1つで、コンセプトは「農家のためのライブハウス」。農家は家と畑の往復が基本なので、消費者と直接触れ合う機会は少ないです。そこで農家本人が自分の思いをお客さんに直接伝えて、自分のつくった野菜を食べてもらい、その感想を聞くこともできる「農家LIVE」などのイベントを行なっています。こせがれネットワークは、レストランのオーナーと一緒にプロデュースに参画している立場です。
また、毎週土曜日に赤坂のアークヒルズで「ヒルズマルシェ」を開いています。若手農家や新規就農者、都内にいるこせがれたちが、新鮮な農産物や加工品などを販売しているのです。たとえば四国から車にイチゴを積んで参加する農家がいます。9〜10時間かけてやってくるのは、六本木という富裕層が多く住む場所で自分が育てた農産物がどんな評価を受けるのか、気になるからです。たった4時間の販売ですから、売り上げは微々たるものでしょう。しかし、来場者や同じように出店している農家、加工業者などとのつながりができます。ヒルズマルシェをきっかけに、ホテルとの取引が始まった農家もいます。
また、ヒルズマルシェには設営を手伝ってくれるファンクラブがあるなど、いろんなつながりが生まれています。
- 大越
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「農業の魅力と可能性」を伝える場づくりをしているのですね。
- 宮地
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そうです。また、東京にたくさんいるはずの農家のこせがれが実家に戻る決心をするためのきっかけづくりも行なっています。偶数月の第1水曜日には農家のこせがれ限定の交流会を開いて、先輩こせがれ農家の話を聞いたり、こせがれ同士が共通の悩みなどを語り合っています。また、帰農を考えている農家のこせがれが農業を始めるための基礎知識を身につける「こせがれ塾」も実施中です。
こせがれネットワークは、手取り足取り教えるというよりも、自身がつながりをつくる、決断するといった行動に踏み出す場づくりを行なっているのです。北海道、宮城県、東海・中部、関西にネットワークがありますが、僕らは団体をつくっているのではなく、ゆるやかなつながりを形成しているだけです。秋田県の米農家が「これからは米だけじゃダメだ」と北海道にアスパラガスの栽培法を学びに行きました。会費を徴収しているわけではなく、みんな好き勝手にやっています。そういうオープンな姿勢が若い世代に受け入れられているのだと思います。
- 前田
- 宮治さんの目標の1つに「農業のイメージを変えること」があります。私は祖父母が農業を営んでいることもあり、ネガティブな印象はあまりありません。こせがれネットワークの活動をつづけるなかで、農業に対するイメージは変わってきたと思いますか?
- 宮地
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自分たちの活動にかかわらず、社会全体が農業を見直す風潮に変わったと思います。東日本大震災の影響もありますが、その前から変化は感じていました。たとえば大学に講演に行くと、皆さんと同じように「私の夢は実家のある山形に帰って地域を元気にすることです」という大学生がいます。地域活性化について学ぶ授業に受講希望者が殺到して選考せざるを得ないといった話も聞きます。僕が大学生のときは、農業や地域活性化について話す人は自分を含めて誰一人いませんでした。若い人の考えが変わってきたようです。
終身雇用を前提としたこれまでの働き方に疑問を抱くなか、農業や地域で働くという別の選択肢があることに気づく人が着実に増えています。









