東京農業大学 地域産業経営学科 SPECIAL TALK|地域の突破力!農大が地域を変えていく

地域が活性化すれば、日本全体が元気になる−俵 慎一 × 高野克己

おいしくて、手軽な値段で、親しみやすいという三拍子そろった地域が誇る食べもの、それがご当地グルメです。静岡県の「富士宮やきそば」や青森県の「八戸せんべい汁」が有名ですが、東京農業大学オホーツクキャンパスに隣接する北見市にも「オホーツク北見塩やきそば」があります。今回は、自慢のご当地グルメを持って全国津々浦々のまちおこし団体が一堂に会する「B-1グランプリ」を運営する一般社団法人愛B(アイビー)リーグ本部の俵慎一さんをお招きし、一次産業の活性化や人材育成の大切さ、そして東京農業大学地域産業経営学科の役割と可能性について、高野学長と語り合っていただきました。

  • 俵 慎一さん  Shinichi Tawara
  • 俵 慎一さん  Shinichi Tawara

    一般社団法人愛Bリーグ本部
    専務理事・事務局長
    株式会社 食のまちおこし総合研究所
    代表取締役

    1965年千葉県松戸市生まれ。東北大学卒業。リクルートで求人情報誌、旅行情報誌事業を10年間担当。98年「ブレイブネットワーク」を創業し、各地の地域活性事業のプランニングに携わる。地域独自の食べ物を求めて3,000軒以上の店を訪れ「日本一食べ歩く男」と呼ばれる。毎年恒例となった「B-1グランプリ」を陰で支える。2013年は11月9、10日、愛知県豊川市で開催。著書に『B級ご当地グルメでまちおこし−−成功と失敗の法則』がある。
  •  高野克己  Katsumi Takano
  •  高野克己  Katsumi Takano

    東京農業大学 学長
    農学博士

    1953年東京都板橋区生まれ。1977年東京農業大学農学部農芸化学科を卒業。同大学院修士課程修了後、本学助手に採用。1985年農学博士。1998年に同応用生物科学部生物応用化学科教授に就任。2008年同応用生物科学部長、2009年同大学・同短期大学部副学長を経て、2013年7月5日、東京農業大学第12代学長に就任(東京農業大学短期大学部の学長も併任)。専門分野は食品化学、食品製造学。

大切なのは「地域活性化に取り組む人材」を育てること

高野
地域産業経営学科は2年前に「地域」という名称を加えました。東京農業大学(以下、農大)が地域において果たすべき社会的ミッションを考えた場合、生産、加工、そして流通まで踏み込んだ地域密着型のビジネスモデルを構築することが重要だと考えているからです。
農大は今年で創立122周年を迎えましたが、初代学長の横井時敬(よこい・ときよし)は、実学を重視する教育理念を掲げました。建学の精神は「人物を畑に還す」です。地域産業経営学科もそれにならって「人物を地域に還す」ことを狙いとしています。ローカルなビジネスモデルをつくるため、農商工連携や六次産業化を重視した研究と人材育成を行なっています。
なぜオホーツクにキャンパスがあるのかといいますと、オホーツクは北海道でも有数の農業・漁業の生産基地という豊かなフィールドです。生産、加工、そしてそれを売っていく販売・経営までをカバーする総合的な学びができるからです。恵まれた地域資源を活かしつつ、人材育成も進めて「農大が地域を変えていく」ことを北海道から発信していきたいのです。
本日は、ご当地グルメによるまちおこしの祭典「B-1グランプリ」を軸に、地域資源として「食べもの」に着目した地域活性化に尽力する俵さんにお越しいただいて、「全国の元気のないところを元気にする」ための取り組みについてお話しいただきたいと考えました。
まずは、B-1グランプリを通じて見た地域への思いや課題についてお聞かせください。
発端は全国的に有名になった静岡県の「富士宮やきそば学会」です。しかし、最初から食べものでまちおこしをしようとしたわけではありません。まちおこしの種を探していて「たまたま」やきそばを発見したのです。
一般社団法人愛Bリーグ本部代表理事で富士宮やきそば学会の会長でもある渡邉英彦(わたなべ・ひでひこ)は富士宮市のまちおこしに携わっていました。みんなでまちを歩く「まちの宝探し」を行なったとき、路地に駄菓子屋が残っているのを見つけました。鉄板があって、しぐれ焼きとよばれるお好み焼きとやきそばが食べられます。昔からあるので特別なものだとは思っていなかったのですが、いったん富士宮市を出て戻ってきた人が「どうも東京のやきそばはおいしくない」と言い、転勤してきた人が「富士宮のやきそばって、なんか違いますよね?」と言う。「えっ、そうなの?」と気づいたことがきっかけでした。
渡邉の生業は保険代理店ですから、やきそばを売ったところで自分の利益になるわけではない。だから遠慮なく「これはまちづくりだ。お前も手伝え」と人を引っ張り込むことができた。つまり、まちおこしの旗頭を「富士宮やきそば」にしたのです。今のご当地グルメのまちおこし活動の多くが富士宮やきそば学会をモデルにしています。
高野

なるほど、自分がいつも食べているものが、他人からみると特徴があるということは、気づきにくいかもしれませんね。
たしかに食は地域の文化を代表する重要なものです。食をPRすることが地域をPRすることにどうつながるのでしょうか?

それ以上に住んでいる人の「郷土への誇り」にもつながると思います。B−1グランプリの狙いはまさにそこにあります。B-1グランプリは、農大OBで八戸せんべい汁研究所事務局長の木村聡(きむら・さとし)さんが企画しました。木村さんは東京で就職したあと帰郷して地元の第3セクターで産業振興の企画をしていましたが、富士宮やきそば学会に興味をもって勉強しに行きました。「食べ物を売っちゃダメなんだ、まちを売ることが必要なんだ、人を巻き込んでいかないといけないんだ」という考え方と手法を学んだそうです。肉や魚、野菜などでダシを取った汁の中に南部せんべいを割り入れて煮込んで食べる郷土料理「八戸せんべい汁」のPR活動を行ないますが、「メディアは2年くらいで飽きる」という現実に直面します。そこで「食でまちおこしに取り組んでいる団体に呼びかけて全国大会をやったら注目されるんじゃないか」と考えました。1年間の準備期間を経て、2006年に「第1回B-1グランプリ」を開催します。今年で8回目、毎年数十万人が押し寄せる大イベントになりました。
B-1グランプリには飲食店や食品加工業者が直接出ることはできません。まちおこしとして活動していて愛Bリーグに加盟している団体による共同PRイベントです。本質的に郷土の情報発信の場なのです。「うちのまちにはなにもないんです」と言う人が多いですが、実際に子どもの頃に自分が食べていたものを友人に食べさせて「うまいな、これ」と言われると嬉しいわけです。たった数百円の食べものだけれど、そういうことが郷土の誇りにつながるのですね。
大切なのは地域の活性化に取り組む人材を掘り起こし、育てること。経済効果も大切ですが、これは後からついてくるものです。
高野
地域の思い入れや文化、伝統がかかわって、つくる人も住んでいる人も誇りに思うご当地グルメ。すばらしい着眼点だと思います。

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開催前日には参加団体によるパレードも行なわれた
提供:愛Bリーグ本部
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